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クレーン無線機の専門用語について解説

テレコン(クレーン無線)

クレーン無線機の専門用語(MSK)(FSK)(CPFSK)(変調指数)

クレーン無線機(テレコン)のカタログでは様々な専門用語が出てきます。
今回は、新旧クレーン無線機に出てくる用語について解説します。

 

ハンディSテレコン

 

 

 

 

 

● MSK(Minimum Shift Keying):最小偏移変調
FSK変調の一種。
FSKの周波数偏移が最小となるよう、変調指数を0.5にして周波数帯域を狭くしたものをMSK方式と呼びます。現在の金陵電機テレコンはこの方式です。

なぜ変調指数が低く、帯域が狭いと良いのか?
変調指数が高いほど占有周波数帯域は広くなります。
電波の利用範囲は限られており、帯域が広がると利用できる部分が減ります。
テレコンでいえば、占有周波数帯域が「狭い」ほど利用できるch数が増えることになります。
(電波の有効活用)
帯域が狭くなることは、その周波数帯域に到来する雑音の影響が少なくなります。
(ノイズを避けられる確立が高まる)
結果、雑音に強くなる、通信距離が伸びるといったメリットがあります。

● FSK(Frequency Shift Keying):周波数偏移変調
情報信号であるデジタル信号の0か1を異なる周波数に割り当て伝送する方式です。
例) 信号の1<マーク>: 2100 Hz 信号の0<スペース> 1300 Hz

● CPFSK(Continuous Phase FSK):位相連続FSK
FSKにてスイッチの切替で周波数の切替 例)2100Hz→1300Hz を行なった場合、切替のタイミングで位相が不連続(きれいに波形がつながらない)が起きます。
波形が乱れる→周波数の変化→不要放射が発生することになります。

CPFSKは位相変化が不連続にならないように周波数を切りかえるようにしたFSKです。
VCO(電圧制御発振器)の制御電圧を変化させて周波数変調することで実施しています。
旧デジタルテレコンはこの方式でした。

● 変調指数
周波数偏移を変調信号周波数で割った値を変調指数といい、変調信号周波数が一定なら、変調指数が高い=周波数偏移が大きいことになります。

● 周波数偏移
周波数変調における周波数変化の幅です。
周波数変調では,変調信号に対応して搬送周波数が変化します。

変調信号入力がある場合の搬送周波数は、変調信号入力がない無変調時の搬送周波数からずれます。ずれの幅の周波数が周波数偏移です。

テレコンでいえば、送信電波(搬送周波数)が429.2500MHzだとして、変調がかかった電波は、429.2500MHz ± ** kHz変化しています。
この± ** kHz分が周波数偏移です。

**が小さい(変調が浅い)、**が大きい(変調が深い)
変調が浅くても、深くても(過変調でひずむ)受信側で正常にデータを受信できなくなります。

● 占有周波数帯域幅(OBW)
搬送波に変調をかけるとスペクトラムが広がり、不必要に広がると隣のチャンネルを妨害します。
占有周波数帯域幅は、空中線電力の99%が含まれる周波数幅をいいます。

スペクトラムアナライザという測定器でこのスペクトラムを確認できます。
スペクトラムアナライザの中には、この占有周波数帯域幅を測定できる機能を持つものもあります。

● bps (Bits Per Second) : ビーピーエス
データ転送速度の単位。ビット毎秒。
1bpsは1秒間に1ビットのデータを転送できることを表します。

テレコンの2400bpsは1秒に2400ビットのデータを伝送します。

携帯などの高速通信と比較するとかなり遅い?
と思われるかもしれませんが、テレコンの操作点数は少ない(データ量が少ない)ため十分な速度となっています。

伝送速度は早いほうがいい?
伝送速度は早ければいいというものでなく、早くなるほどノイズの影響を受けやすくビットエラーの発生が増えます。

イメージとして、電波は波ですが、転送速度が遅い波(波の間隔が広い)の途中に一瞬妨害が入っても、受信側で波を形を判別できますが、転送速度が速い波(波の間隔が狭い)の途中に妨害が入ると受信側で波の形が判別できなくなります。

テレコンはクレーンを動かす用途に用いるものであり、安全の観点からノイズに強い安定した通信が求められます。
その為に適した方式が用いられているという訳です。

● EMI対策(Electro Magnetic Interfernce) :電磁干渉
ノイズを出さないようにする対策。

ノイズを受けても障害を発生しないようにする対策をEMS対策(Electro Magnetic Susceptance) : 電磁感受性と呼び、EMI/EMS両方の対策をEMC(Electromagnetic Compatibility):電磁環境両立性といいます。

● パリティチェック
デ-タの特定区間内において、データの1または0を計数し、パリティビットをデータに挿入して送信。受信側でデータをチェックし、符号の誤りを検出する方式。

1の数を奇数に統一するようにパリティビットを付加する方式を奇数パリティチェック方式といい、偶数に統一するようにパリティビットを付加する方式を偶数パリティチェック方式という。

例) 奇数パリティチェック
( )はパリティビットを示す。

送信データ : 00100001(1)
データの1を合計すると2。パリティビットに1を付加し、合計3で奇数になる。
上記のデータを受信側で次のデータで受け取ったとすると、

受信データ : 00100000(1)
データの1を合計すると2。

奇数パリティチェックで必ずデータは奇数になるはずなので、どこかのビットが反転し、エラーが発生したと判断できる。

2ビット(偶数個)データが反転したら偶数、奇数が変わらないのでは?
そうです。この場合は誤りは検出できません。

● サイクリックデジタル伝送
直列符号に変換されたデジタル(Digital)符号を繰り返し(Cyclic)伝送するという意味です。
この伝送方式の特長は、受信した符号列に誤りがないかをパリティ

チェックや反転2連送照合などの符号誤り検定制御方式で検定することができ、伝送の信頼性が高いことです。

● 反転2連送照合方法
繰り返し同じデータを2度送り、受信側で1回目と2回目のデータを比較する方式で、伝達時間は長くなりますが、2度送ることでノイズ等により、1回目のデータのビットと、2回目のデータのビット双方に影響が出る確立は非常に少なくなります。

(ノイズにより1回目のデータは変化しても2回目のデータに影響が及ぶ確立は低くなる)
1回目のデータに対して、2回目のデータの符号を反転して伝送する方式を反転2連送と呼びます。
1回目と2回目のデータを比較し差異があればエラーとなります。

● CRC:巡回冗長検査(じゅんかいじょうちょうけんさ)
パリティチェック方式よりさらに厳密なチェックを行なえる方式です。

送信側で、デ-タ(ビット列)を多項式の係数に見立てて変形し、の多項式をあらかじめ決められた生成多項式で割る。
その余りをCRCとして伝送するデ-タに付加して送る。

データ ÷ 生成多項式 = CRCコード(余り)
送信データは、「データ + CRCコード」

受信側で、受信したデ-タ(データ+CRC)を生成多項式で割り、その余りが0なら正常に受信できたと確認できる。

受信データは、 (データ + CRCコード) ÷ 生成多項式 = 0 で正常
割り切れなければ、データ異常となります。

● ダイバーシチ方式
2つのアンテナで電波を受信し、受信の強いほうのアンテナを選択し受信します。
テレコンでは、送信機を持つ操縦者の位置が変化し、それに伴い受信状況も刻々変化します。

アンテナには電波を受けやすい方向があります。
2つのアンテナを用いることで、作業者の位置が変わってもカバーできる範囲が広くなり、より安定した受信が可能になります。

● 機器アドレス
テレコンの1装置毎にキー番号を割り当てることを意味します。
制御器からの電波を受信したとき、このアドレスが一致しないかぎり受信装置にて主電源の投入を不能にし、運転をできなくします。
また、妨害電波を受信した時も、アドレスの不一致を検出し運転を中止させます。

● 同期 (sync)
テレコンにて制御器から送信される電波。
それに乗るデータは1と0の組み合わせです。

受信装置では、そのデータがどこから開始されたものなのかを判断する必要があり、それが分からないと、どのビットが操作信号なのか判別できません。
そのため、特定のビット列を送信データに付加し、受信側でデータの開始タイミングを知ることができるようになっています。

この付加しているデータを同期信号、送信と受信のタイミングが一致していることを同期がとれていると言います。

● IP65(防塵・防水)
International Protection (保護等級)の略です。
IP後の数字により、等級の度合いが分かります。

IP□△
□: 器具に対する保護の内容外来固形物の侵入、 人体に対する保護の内容危険な部分への接近に対しての等級
△:器具に対する保護の内容水の侵入に対しての等級

金陵電機テレコンのIP65は、
□→6: 耐じん形、粉塵が内部に侵入しない。
針金での危険な部分への接近に対して保護されている(針金 直径1.0mm長さ100mm)
△→5:いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない。
となります。

 

以上、クレーン無線機で使用される専門用語についてご紹介しました。

本解説内容のPDF版は、「テレコン製品紹介のページ」よりダウンロードできますのでぜひご活用ください。

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